原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

UK音楽シーンを活気づかせているひとり、ユセフ・デイズが話題作『Black Classical Music』を携えてブルーノート東京に初登場。昨日からマジカルこのうえないステージを届けています。

共演者はいずれも、同アルバムに参加していた精鋭たち。マリク・ヴェンナはグラミー賞受賞プロデューサーとしても知られていますが、この日はアルト・サックス奏者としての底力を堪能させてくれました。とにかく音色がニュアンスに富んでいて（リヴァーブの用い方も含めて）、時にリリカルに、ときにアグレッシヴに楽器の旨味を届けてくれます。イライジャ・フォックスは尊敬する音楽家にモーリス・ラヴェルやロバート・グラスパーを挙げる、ワイドレンジな視野の持ち主。アコースティック・ピアノと3種のキーボードを駆使して広大な音の風景を描きました。現代最重要ベーシストのひとりであろうロッコ・パラディーノ（ザ・フー、ジョン・メイヤー、RHファクター等にも関わった重鎮ベーシスト、ピノ・パラディーノの子息）はステージの一番右側に位置。重厚なバッキングから目の覚めるようなソロまで、その指弾きは縦横無尽そのものです。

リーダーのユセフ・デイズは、刺激的なビートやフィルインを打ち出して、こうした凄腕たちを絶え間なく鼓舞してゆきます。"歌うように演奏するために施したのでは？"と想像せずにはいられないほど美しいチューニング、各鼓面の"一番鳴る"スウィートスポットにスティックを下ろしているから出せるに違いない超明快な打音、シズル感よりもクラッシュ感を重視したとおぼしきシンバルの選択（モダン・ジャズ黄金時代のドラマーならシズル感を重視したことでしょう）、強力無比なキック、鮮やかそのものの両腕の動き。サックスの響きとは対照的に、PAから出てくる音の質感が徹底的にドライなところも強く印象に残りました。ユセフたちのパフォーマンスは、ドラム演奏を見聴きする大きな喜びを与えてくれるのはいうまでもないところですが、加えて、レパートリーが趣向に富み、ライヴならではの熱気を加えつつも1曲あたりの演奏が決して冗長にならず、演奏家が一丸となって丁々発止を繰り広げます。

1960～70年代のモード・ジャズ、例えばマッコイ・タイナーの音作りを現代の空気に持ち込んだかのような『Black Classical Music』のタイトル曲から始まった初日セカンド・セットでは、同作からの「Afro Cubanism」、『Duality』からの「For My Ladies」（イライジャの鍵盤が絶品）、先ごろ配信が始まった『Live From Malibu』からの「The Colour Purple」やジャコ・パストリアスのカヴァー「Portrait Of Tracy」（ロッコのベースが冴えわたっていました）などが次々と演奏されました。途中、メンバー紹介などのMCはありましたが、感覚としては組曲をからだじゅうで浴びているような気分です。この、あまりにもスケールの大きな、風通しの良い音世界の最後の一音が消え去った時、超満員の観衆から猛烈なスタンディング・オヴェイションが沸き起こったことは言うまでもありません。必聴必見のステージは26日まで行われます。
(原田 2024 2.25)

Photo by Makoto Ebi

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【LIVE INFORMATION】

YUSSEF DAYES
2024 2.24 sat., 2.25 sun., 2.26 mon.